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高森明勅
2018.10.11 13:28政治

靖国神社宮司、退任へ

靖国神社の小堀邦夫宮司の退任が
各メディアに報じられた。
 
同氏が12代目の宮司に就任されたのが今年の3月。
 
4月10日に神社近くのホテルグランドパレスで
「就任挨拶会」が開催された。
 
この会には私も招かれ、
新宮司と簡単に言葉を交わした事も覚えている。
 
それからまだ半年ほどしか経っていない。
 
まことに遺憾だ。
 
内部の研究会とはいえ、
あのような発言があったのなら、
退任はやむを得ないだろう。
 
靖国神社は「勅祭社」だ。
 
約8万社あるとされる全国の神社の中で、
伊勢の神宮を別格として、天皇陛下の特使である
「勅使」が定期的に差遣される勅祭社は、
 
僅かに16社のみ。
 
靖国神社はその栄光ある1社。
 
しかも、靖国神社だけは、
毎年、春秋2度に亘って勅使のご参向を仰いでいる。
 
その点では、毎年、3回も勅使のご差遣を戴く
神宮に次ぐ、厚遇を受けている。
 
陛下が靖国神社にお寄せになる格別のお気持ちは、
何よりもこの事実に歴然と示されている。
 
靖国神社の宮司であれば、
その厳粛な事実に、どれだけ感謝しても、
し足りないはずだ。
 
ましてや、陛下はあらゆる困難を乗り越えられて、
靖国神社に祀られる英霊が戦い倒れた国内外の戦跡に、
「慰霊の旅」を繰り返して下さっている。
 
それを英霊達がどれほど喜んでおられるか。
 
それすら想像できないようでは、
英霊への祭祀もただの形式だけに
堕してしまいかねない。
 
昭和天皇の靖国神社への行幸が、
昭和50年11月を最後に、
その後は中断してしまった理由については、
以前、拙文を認めた
(『WiLL』平成26年12月号)。
 
くれぐれも誤解をしてはならないのは、
靖国神社へのお出ましは、
陛下お1人だけのお気持ちで可能になる事柄ではない、
という事実だ。
 
それは天皇のご行為の3分類のうち、
「その他の行為」に該当する。
 
但し事柄の重大さから、
他の殆どのケースとは違い、
宮内庁レベルを越えて、
内閣の同意と責任による事が前提となる。
 
安倍政権では中国の顔色を窺って、
首相が靖国神社に近付かないばかりか、
閣僚の参拝すら、もう2年連続でゼロという惨憺たる有り様。
 
そんな情けない状態を、
保守系知識人の多くは見て見ないふりをし続けている。
 
多数の国民もそのまま見逃している。
 
率直に言って、こんな条件下で、
天皇陛下のご親拝が可能になるとは、
残念ながら到底考えられない。
 
靖国神社ご当局が天皇陛下の
ご親拝を待ち望むのは当然だ。
 
それは靖国神社に祀られる英霊達の願いであり、
何よりも天皇陛下ご自身のご念願でもあると考えられるからだ。
 
しかし、その為には、
それを実現し得る環境を十分に整えるのが先決だ、
という事を知らねばならない。
 
その際、靖国神社が既に(!)
天皇陛下からどれだけ厚くお気持ちを掛けて
戴いているか、その事実への深い感謝を改めて
肝に銘じるべきだ。
 
来年は靖国神社
ご創建150年という大切な節目の年に当たる。
 
靖国神社が速やかに社内の体制を立て直し、
立派に再出発される事を願う。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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